西ローマ帝国衰滅史(抜粋)
◆「西ローマ帝国衰滅史」--『永遠のローマ』(「世界の歴史 3」弓削達著、講談社刊)・『ローマ帝国衰亡史』(エドワード・ギボン著、筑摩書房刊)を読んで
より抜粋
2005年3月14日
◇帝国=皇帝の魅力
西帝国は維持されず、短期間で滅亡した。帝国が維持されるのは帝国=皇帝に魅力があるからである。軍隊にとって皇帝の魅力とは権威・権力を使って、誇るべき軍隊という権威を軍に持たせ、軍に規律を与え、給料を支払い、補給・装備を与え、戦場で勝利させるという期待を満たすからである。
市民にとっての皇帝の魅力とは第一に権威・権力により服従させた軍を使って帝国の安全と治安を守ることである。そして、支配の公正さを保つこと。すなわち支配が正義と人間愛に基づくこと。元首政下では、自由に暮らせること、税が軽いことなども魅力であったが、専制君主政下で失われた。文明によるインフラの恩恵は、「公共善を維持することに誇りを抱く誇り高き人々」が失われて行った結果、薄らいで行く過程にあった。
蛮族にとっての魅力とは、皇帝が権威・権力を使って諸勢力の調停を行うこと、皇帝の権威・権力を借りて権威・権力を振るうこと。ローマ文明の輝き。これも「公共善を維持することに誇りを抱く誇り高き人々」が失われて行った結果、薄らいで行く過程にあった。
帝国=皇帝がこれらの期待を満たせば、皇帝の権威・権力が維持・増進され、裏切れば衰える関係にあった。軍隊、市民、蛮族いずれにとっても、皇帝の権威・権力が重要であった。そして、究極において皇帝の権力を支えていたのは、皇帝の権威であった。
東帝国皇帝の権威を支えるものは何か。世襲による血に基づく権威。皇帝自身の能力を含むカリスマ。これは偶然的なものであった。永遠のローマ帝国の正当な継承者としての伝統的権威。それに、皇帝教皇主義による神の代理人としての権威。皇帝教皇主義は、ここでは単に皇帝の権威が神の代理人としてキリスト教により支えられることを指したい。皇帝とキリスト教徒の具体的な政治関係、皇帝と教会の具体的政治関係を規定するものではない。
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